感謝と称賛をし合う社内SNS「Unipos」を導入した会社の工夫と、導入から4年のリアル
企業の健全度を見極めるうえで、「人的資本」「心理的安全性」などが重視されるようになり、企業の風土や働きやすさ、その可視化をより一層求められるようになりました。
エンゲージメント(企業への愛着・信頼・貢献)に関わる一つとして、「評価」が挙げられます。
自らのがんばりが正当に評価されるか、仲間や組織のためにした行動を見てもらえているかどうかは、前向きに働くうえで重要なポイントです。
皆さんの会社では、「評価」についてどのような取り組みをされていますか?
アイルにはさまざまな仕組みがありますが、その一つとして2020年から導入している「Unipos(ユニポス)」があります。
Unipos社が提供する“人と組織の行動力を引き出し、カルチャーを変えるWebサービス”で、仲間の良い行動に称賛や感謝を投稿し合う社内SNSとして活用しています。
「Unipos」の導入と活用促進の取り組みを通し、この人のこういった行動が素敵だ、この人のこういった考え方に助けられた、といったエピソードが全社でオープンになり、「他部署や業務で関わりの少ない仲間の理解につながった」という声が過半数を超えました。
また、2024年2月には、提供元のUnipos社から「『Unipos』の活用を通して経営陣と現場が連携しながら、文化の醸成に尽力している」と評価され、導入企業を代表して贈られる「カル本アワード2023 ベストカルチャー共創賞(事務局×経営陣部門)」を受賞しました!
ただ、アイルは元々評価制度が充実しています。
導入時には反対の声もあり、さらに導入後数年が経過した現在、投稿者が偏り、ログインしないメンバーが増えるという事態を、現在進行形で改善しようと動いています。
ではなぜ、元々評価し合う文化のアイルで新たなツールを導入したのか?
マンネリをどう改善していくのか。
今回は、この「Unipos」の導入経緯や活用促進の方法、実際の活用例、現在取り組んでいることなどをリアルに紹介します。
評価制度は数あるなかで、さらに「Unipos」を導入した理由
アイルではこれまでも全社の年間表彰や、月間の貢献者への贈答品配送、部署ごとの行動表彰といった評価の仕組みは多々ありましたが、業務の実績を伴う評価や、特定の部署内での評価になりがちでした。
たとえば、
などなど、日常で仲間に感じる感謝や尊敬こそが周囲へ好影響を与えるグッドアクションであり、メンバーの魅力が分かるエピソードですが、相手にしっかりと言葉にして伝えそびれてしまったり、当人同士の会話で終わってしまったりすることが多いものです。
そんな日々のささやかな場面で生まれる感謝・称賛をリアルタイムに言葉にして伝え、全社に共有できるのが「Unipos」です。
interview
「Unipos」導入プロジェクトを進めた経営企画本部 常務取締役の岩本に、導入にいたった経緯を聞きました!
―「Unipos」を導入したきっかけを教えてください。
コロナウイルス蔓延後、働き方が大きく変化したことがきっかけです。全社的にテレワークに移行し、他部署が今どのような取り組みをしているのか、また自分のチームでも現場で実際に起きていることが見えづらくなっていたことに課題を感じていました。
「Unipos」導入の決め手は、感謝や称賛を送り合うことでお互いを高め合い、そうした一人ひとりのがんばりや活躍が、当事者だけでなく他のメンバーとも共有できるという点で、アイルの企業文化とマッチしていたことです。
また、組織のなかで自分の考えを気兼ねなく言い合える状態のことを「心理的安全性」と呼びますが、私自身も組織づくりをするうえで日頃から意識しています。
「心理的安全性」を高めるためには、相手を讃えて認め合ったり、感謝を言葉にして伝えたりといった文化の醸成が必要だと感じていました。
―「Unipos」の他に検討されたものはありましたか。
全社では他社のチャットツールを導入し、日常的な連絡に活用していますが、私の管轄する一事業部で、メンバーの活躍やがんばりを共有し合う「褒めチャット」というグループを作ったこともありましたね。
共有された内容に対し、他のメンバーがリアクションをするという運用をしていました。
ただ、この「褒めチャット」をそのまま全社的にやろうとすると、書くハードルが上がってしまい浸透しなさそうだという点が懸念でした。
「Unipos」はSNSのような感覚で気軽さがあり、当事者以外の人も拍手で共感の気持ちを伝えられるので、投稿を送った人・もらった人だけでなく、それを見ている人も同じ温度感で参加できるのが良いですね。
実際に投稿された“他部署の取り組みへの感謝”の一部
―「Unipos」を導入した当初、どういった効果が期待できると考えられましたか。
たとえ数字につながらなくても、陰で会社に貢献してくれている人にスポットライトを当てられればと考えていました。
アイルはサービス自体、企業のバックサイドを支える担当者さまに光を当てたいという思いで提供していますから、それを社内でも体現する感覚ですね。
数字に貢献してくれているメンバーはもちろんですが、直接自分の数字にはならないけど献身的に取り組んでくれていたり、裏方からいつもアイルを支えてくれていたりと、数字では測れない活躍をしてくれているメンバーも多くいて、その存在は会社にとってなくてはならないものです。
“日々のやり取りに対する感謝”の一部
日頃業務や手続きをスムーズに進められている裏側には、そうしたメンバーの工夫や尽力があること、それが当たり前ではないことを、「Unipos」でより広く周知できればと考えました。
またそうして投稿をもらったメンバーにとっても、自身の取り組みを周囲が知ってくれていることはモチベーションになるのではないかと思っています。
―導入時に障壁はありませんでしたか。
反対意見もありました。
社員が本当に使うかどうか、元々評価制度が数あるなかで、費用をかけてまでやる価値があるか、本人同士で伝え合えば、あえてツールを使う必要はあるのかといった懸念の声はありました。
でも、もし上手くいかなければやめるぐらいの気持ちで、「とりあえずやってみよう!」と半ば強引に押し切った部分はあります。
そのため最初は東京拠点のみで試験導入し、約半年後に全社展開した経緯でした。
そして広報に協力してもらい、「Unipos」を東京拠点で試験導入した旨や、そこで生まれた良い投稿などをピックアップして社内報で紹介してもらいました。
それを見ていた関西のメンバーからも、「導入したい」という声が大きくなってきたので、満を持しての全社導入になりましたね。
全社導入後は、関西でこの取り組みに前向きなメンバーが積極的に活用してくれて、そのメンバーから波及する形で広がっていきました。
―Unipos社からは、熱のこもった投稿や拍手数の多さに驚かれているそうですね。
共感性の高い投稿も多いからか拍手数も多いですね。毎月コンスタントに1000を超える拍手が集まっている印象があります。これをUnipos社の担当の方に話すと、「4桁超えの拍手数なんて見たことがない」と驚かれました(笑)
やはりそれはアイルの讃え合う文化と「Unipos」というツールの親和性が高いからこそではないかと考えています。
わざわざ全体に共有する必要がないという声もなかにはあるかと思います。
もちろん当事者間で完結するのも1つの方法ですが、その人の努力が広く知られることで、その人自身の活力につながったり、その人の姿勢が他のメンバーの刺激や学びになったりと、皆の前で発信するからこそ生まれる価値があると考えています。
注目度の高い“お客さまからのお言葉”
―今後「Unipos」を活用していくなかで目指す組織像はどのようなものですか。
感謝を伝え合える組織、感謝のために頑張れる組織というのを目指していきたいですね。
一人ひとりが周りのために努力しようとする意識を持ちながら、誰かにしてもらったことを当たり前と思わず、言葉にして発信していける組織は、社内の連携をより密なものにし、さらに芯の強い企業へと成長していけるのではないかと思います。
「Unipos」の活用をきっかけに、感謝し感謝されるといった好循環が、「Unipos」上に限らずさまざまな場所で生まれる組織を作っていきたいと考えています。
―ありがとうございます!
新たなツールが浸透するように取り組んだこと
活用推進メンバーの発足
アイルは約1,000名の社員がおり、日常で利用しているイントラネットや社内報、チャットツールがあるなかで、新たに導入する社内SNSの活用が浸透するかどうかは懸念事項でした。
そこでUnipos社のアドバイスもあり、導入時に部署を横断した「活用推進メンバー」を各部署から選出しました。
推進メンバーは月に1度のミーティングで活用促進方法などを話し合い、自部署に持ち帰ってログインを呼びかけたり、自らが積極的に投稿することで盛り上げたりしました。
インセンティブ制度「おきもチップ」の導入
全社導入から半年後の2021年8月から、月間で最も共感を集めた投稿の関係者にインセンティブを支給しています。
毎月拍手人数が最も多い投稿と、次に多い投稿の2つに「おきもチップインセンティブ」が贈られる仕組みにし、投稿者・投稿をもらった人両者に贈られます。
思いのこもった投稿と、そのエピソード、投稿された人の行動に還元することで、投稿・投稿される行動のどちらも会社を支える重要なアクションであることを実感してもらう目的です。
広報と連携した社内報の有効活用
アイルではアイル社員・契約社員のみが閲覧できるWeb社内報「AIREAL(アイリアル)」があります。
そこで、3か月ごとにインセンティブ対象となった投稿を社内報でまとめ、「おきもチップアワード」という特集で投稿をもらった人からの喜びのコメントを紹介しています。
さらに、そのなかでも特に共感を集めていた投稿をピックアップし、投稿にまつわるエピソードを関係者にインタビューして「おきもちデリバリー」として記事にしています。
投稿者×被投稿者の対談や、被投稿者による投稿に関連する取り組みのインタビューなどが主で、投稿だけは分からない取り組みの背景や、投稿者・被投稿者の微笑ましい関係性、裏話などを知ることができるなどとして、社内報記事のなかでも心あたたまる人気の企画です。
他にも、「Unipos」で新機能がリリースされた際はその紹介や使い方なども詳しく解説するなど、定期的に「Unipos」に意識が向くような記事を発信しています。
活用アイディアの提案
また、「Unipos」では投稿に自由にハッシュタグをつけられ、いくつか会社側で設定したハッシュタグも用意していますが、「期間限定ハッシュタグ」という形で、そのときどきに応じたハッシュタグも提案しています。
年度の変わり目には「#一年間ありがとう」、12月は「#今年のお礼は今年のうちに」、など、季節に合わせたハッシュタグを提案することで送りたい人や送りたいできごとを思い出してもらう、ネタを発掘してもらう狙いです。
渦中では忙しく伝えられていなかった感謝や、日々の感謝がたくさん投稿されます!
導入から4年の壁をどう乗り越えるか
2024年現在、社内で「Unipos」の存在は浸透した一方で、下記の問題に直面しています。
一時は利用を辞める案も出ましたが、管理職メンバーに意見を募ったところ、「再度利用方法について考え直してから利用廃止を検討したらどうか」という意見が多く、改めて「Unipos」の存在意義を皆ですり合わせ、より良い活用方法を話し合うことになりました。
利用から数年が経つと、良くも悪くも存在が当たり前になってしまいますが、会社の費用で運用しているツール。
「自分はあまり使っていないけどないのはさみしい」というのは通用しないこと、存続させたいなら自ら積極的に活用しないと、何でもずっとあるのが当たり前ではないことを実感する機会でした。
投稿シーンの具体化
これまでは投稿者に投稿のタイミングを委ね、自由に投稿してもらっていましたが、「Unipos」の存在を意識づけるため、たとえばどういったシーンで投稿してもらうのがいいか、管理職で協議。
誰もが自分ごととしてツールの存在を意識するためには、「投稿をもらったことがない人」を減らす必要があります。
入社歴が浅いメンバーは、なかなか投稿しづらいのではという意見もあり、まずは管理職が積極的に部下に投稿することで、皆が投稿をもらう喜びを味わえるようにすることを目標にしています。
こういった意見をもとに、管理職が改めて積極的に投稿し始めたことを機に、全社的に投稿数が急増。
投稿が増えたことで周囲も気軽に投稿しやすい空気になり、これまで投稿をもらったことのなかったメンバーも自分や自部署のメンバーが投稿をもらうことでログインする機会が増え、ログイン率・投稿数は上昇しています(推移は後述)。
“プロジェクト完了後の労い”
推進メンバーの再結成
また、このフェーズで改めて各部署からの活用推進メンバーを再選出しました。
導入時のメンバーとは異なり、特に利用に二の足を踏んでしまう若手メンバーを取り込みたいという思いから、入社5年目くらいまでの若手メンバーを中心に選出。別で、管理職のみの推進チームも発足させました。
現場メンバーからの声を共有し合い、活用促進に向けた定期ミーティングを実施し、推進メンバー自ら積極的に活用しながら自部署へも活用の投げかけをしています。
トップダウンではなく、現場の中核を担うメンバーが部署を横断し、当事者意識をもってプロジェクトとして推進していくことで、「やらされている意識」をなくすよう取り組んでいます。
以上の取り組みを開始し、投稿数・ログイン率は下記のように推移しています。
3月は従来通りの運用、4月から管理職の投稿促進をスタートし、7月から推進メンバーを再結成させました。
まだ改善の余地はありますが、着実に効果は表れているかと思います。
最後に
「Unipos」によって社内で生まれた会話や、顔を合わせたことのない他拠点メンバーの人となりを知れたり、「Unipos」上で初めて生まれるコミュニケーションがあったりと、導入後に発生した好循環や好影響は多々見られます。
その一方で、組織が大きくなるほど新たな文化を浸透させることの難しさや、波が出てしまうことも感じており、本記事ではあえてそのリアルをお届けしました。
思い切った新たな挑戦には、周囲を巻き込むこと。
そしてその先で常に「今の組織に必要か」を見直し、「悪しき文化」とならないように工夫を続けること。
やりっぱなしではなく、トライ&エラーを繰り返しながら磨いていくことで、新たな文化として根付くのだと思います。
今後の当社の動向にもご注目いただきつつ、他社さまのご参考にもなれば幸いです!